新しい治療方法

TCHの治し方

「よくないからやめよう」と考えて,絶えず口を意識し「歯をはなしておこう」と考えるかもしれませんが,このように自ら気をつけることでこの癖が抜けた方はいません.気をつけようと考えている間は歯をはなしておけるでしょうが,何か他の事を考えた瞬間に歯は再び接触してしまうはずです.

ですから,意識的に歯をはなそうとするのではなく,他の事を考えているとき,他の作業をしているときに,自分に歯を接触させていることを気づかせ,その瞬間に歯を離すという行動を繰り返させるのがいいのです.これを繰り返し繰り返し行っていると,徐々に歯の接触に気づくようになり,もっと時間が経過すると,気づく前に歯の接触だけで,はなすようになります.

このためのトレーニングでは自分に気づかせる方法として,家中に貼紙をします.「歯をはなす」,「リラックス」といった言葉を書いた貼紙を10枚以上用意します.これを家中に貼ってください.仕事でパソコンを使っているようなら,パソコンのモニターから目をそらせた場所に貼るといいでしょう.そして,貼紙に気づいた瞬間に口を開いて息を吐き出しながら,全身の力を抜きます.この動作を繰り返し行ってください.

この動作をする時に重要なことは,大げさに大きく動かすことです.細かく説明すると

1.貼り紙に気づいた瞬間に鼻から大きく息を吸い込みます.その際に大きく肩を持ち上げ胸を大きく広げ空気を多く吸い込みます.

2.次の瞬間に口をなるべく大きく開けて「あっ」とか「はっ」と声を出しながら一気に口から息を吐き出し,同時に肩を落とします.

3.この動作を1秒以内に1回だけ行ないます.2回,3回と繰り返す必要はありません.ただ家中に貼り紙がありますから,あちこちで繰り返すことになります.

このような大げさな動作が必要なのは,口の脱力だけだと脳が気づきにくいという問題があるからです.自分で行なうと分かりますが,軽く咬んだ状態から口を開き歯の接触をなくしても,頬やこめかみの脱力感は感じられないと思います.そこで大脳が脱力に気づけるように肩の脱力も加えることにしたのです.いわば大脳をだますということです.

このようにしてトレーニングしていくと,そのうちに貼り紙を見なくとも歯の接触に気づくようになります.そうなったら気づいた時に同じように脱力してください.さらに進むと歯が接触してから気づくまでの時間が短くなっていき,ついには接触に気づく前に勝手に歯が離れるようになります.その時点では大きく開口したり,肩の持ち上がりはなくなっているかもしれませんが,口の脱力はできるようになっているはずです.

重要なことは,家人から「なにやってるの?」と不思議がられるように動作することです.

これまでの例では平均して2ヶ月程度でこの癖から解放されます.