マウスピース治療について

3.マウスピースの有効性

世界的に厳密に有効性の評価が行われて科学的データの出ているマウスピースは1種類だけ(上あご,全部の歯をおおう,硬いプラスティック,厚さ1~2mm)で,他のタイプのマウスピースは一つとしてその有効性が科学的に評価されたものはありません.また有効とされたただ一つのものにしても,その有効性数値は「70%の患者に有効であった」という程度で,全ての患者に有効であったというものでもありません.さらにこの70%という数値にしても,われわれが昔このタイプのマウスピースを,第一選択として顎関節症患者さんに入れていた1970~1980年代,効果は70%には及ばずせいぜいよくて「50%の患者に有効」といった感じでした.しかも,その「よくなった」患者さんにしても,完全に症状の消えた方はごく一部で,多くの患者さんには軽い症状が残っていたり,体調悪化時に再発するという状態でした.今から考えると,このホームページに掲載しているようにTCHを持っている患者さんにはマウスピース治療が無効であることを示していたのです.どうしてTCHを持つ患者さんには無効なのかといいますと,TCHのある患者さんにマウスピースを入れると安心してマウスピースを咬みます.間にマウスピースが入っていても,咬む動作によって筋肉が働くのは同じですので,これによってTCHがさらに長時間化しますから,関節や筋肉への負担はもっと増加することになるのです.患者さんの中には夜中に無意識にマウスピースを外す人,あるいは症状が悪化する人が出てきます.

このように考えると,2004年の調査で痛みを持つ顎関節症患者さんの80%にTCHがあることが判明していますので,マウスピース治療が完全に症状を消すことができるのはTCHを持たない20%の患者さんだけだろうと考えています.