顎関節症になって歯科受診すると,多くの歯科医はマウスピースを作ってくれます.「これを使うことで関節や筋肉を安静に保ち,顎関節症を治していきます」と説明を受けるはずです.
一般的には上あごの歯列の型を取り,そこに流し込んだ石膏で歯列の形の模型を作ります.その模型に合わせた硬いプラスティックによる歯列全体のかぶせものを作り,これを寝るときに歯にかぶせて寝るように指示されます.
このマウスピースを使うという治療の原点は,顎関節症の原因がかみ合わせの異常によるという考え方から始まりました.「かみ合わせが悪くて顎関節症になったのだから,人工的に理想的なかみ合わせを与えればよくなるはずだ」と考えたのです.しかし現在では「かみ合わせの悪さ」がただ一つの原因ではなく他に多くの原因があり,かみ合わせの悪さはむしろ原因としての影響は少ないということも分かってきています.しかし医療保険で顎関節症に対する治療方法として認められているために,未だに多くの歯科で使われています.